諸子百家争鳴 - 中国古典思想の世界 - 論語/孔子/孟子/大学/中庸/荀子/老子/荘子/列子/韓非子/孫子/墨子/史記
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 ■荘子(そうじ) 33篇 65,190字
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 荘子(そうじ) - 生没年:前369? - 前286? 姓:莊 名:周 字:一説に子休 出身地:宋国蒙
 道家の代表的人物。『史記』によれば、かつて宋国蒙の漆園の官吏であったというが詳しくはわからない。
 思想は黄老の学に帰着し、「道」を寓話で説いた。 栄達を求めず、無為自然を体現し自由の境地に遊ぶ。
 博学で通暁せぬ書物はなく、文辞に巧みで世事を指示し、人間の情を推察して、儒・墨の徒を批判した。
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 『荘子 内篇・外篇・雑篇(1)~(4)』 荘周/金谷治/岩波文庫 …> [関連書籍] 
 『荘子』は道家思想の代表的古典として,儒家の『論語』や『孟子』などに対立しつつも古代中国思想の
 重要な一翼をなし、我が国にも多大な影響を与えた。 卑小な人間世界から飛び立ち、人為を超越した
 自然の世界に融けこんで、自由な精神を得ようとする荘子の思想は、まことに魅力的である。
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 『荘子物語』 諸橋轍次/講談社学術文庫 …> [関連書籍]
 孔孟の教えが五倫五常を重んじ秩序を固定化するのに対して、荘子の哲学は無為自然を基本とする。
 二千三百年後の今日なお、社会の各分野で『荘子』が益々注目される所以がそこにある。
 変幻龍のごとしと称されるその天下の奇文を、大儒諸橋博士が縦横に説いて余すところがない。
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■荘子(そうじ) - 生没年:前369? - 前286? 姓:莊 名:周 字:一説に子休 出身地:宋国蒙 …
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道家の代表的人物。『史記』によれば、かつて宋国蒙の漆園の官吏であったというが詳しくはわからない。
思想は黄老の学に帰着し、「道」を寓話で説いた。 栄達を求めず、無為自然を体現し自由の境地に遊ぶ。
博学で通暁せぬ書物はなく、文辞に巧みで世事を指示し、人間の情を推察して、儒・墨の徒を批判した。
唐の玄宗のときに神格化され、「南華真人」と尊称される。『三国志演義』冒頭の南華老仙は荘子を指す。

「上は造物者と与(とも)に遊び、下は生死を外(わす)れ終始なき者と友と為る」、「独り天地の精神と往来して、
万物に敖倪(ごうげい)せず、是非を譴(せ)めず、以て世俗と処(お)る(天下篇33-06)」と評される。

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■『荘子(南華真経)』について …
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『荘子』(33篇)は荘周自身の著作として伝わる内篇と、後学の手による外篇・雑篇に分けられる。
思想の主題は「万物斉同」や「無用の用」に象徴され、世俗から離れた暮らしの中に喜びを見つけ、
道に近づくというもの。文章は寓話に富み、表現に巧みで古今に卓逸する名文として読まれ続けてきた。

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■本頁について
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『荘子』 33篇(岩波文庫版は257章)のすべてについて、各章の概要・重要文句・登場人物を把握できるように努めた。
各篇の章立て・書き下し・注釈は、『荘子』(荘周/金谷治/岩波文庫)による。
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※本頁は上記本の補助的な目次・ガイドを目指し作成しています。現代語訳や注釈等は訳本をご確認ください。

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■荘子(そうじ) 内篇・外篇・雑篇 33篇257章 65,190字
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■内篇 7篇55章
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01 逍遥遊篇(しょうようゆう) - 「囚われのない自由な境地に心を遊ばせる」という意味
├01 北冥に魚あり、其(そ)の名を鯤(こん・魚卵・はららごの意)と為す。 化して鳥と為るや、其の名を鵬(ほう)と為す。 →大鵬図南
├02 堯(ぎょう)、許由(きょゆう)に天下を譲る - 名は実の賓(ひん)なり。  鷦鷯(しょうりょう)と偃鼠(えんそ)
├03 肩吾(けんご)と連叔(れんしゅく)、狂接輿(きょうせつよ)を語る - 神人とは
├04 恵子(けいし・恵施)と荘子(1) - 魏王の大瓢(おおひさご) →無用の用
└05 恵子と荘子(2) - 役立たずの樗(おうち・栴檀) 無用の用と曲全

  ・堯(ぎょう) - 姓は伊祁(いき)、諱は放勲(ほうくん) 伝説上の聖君で、五帝の一人。その仁政は後世君主の模範とされる。
  ・許由(きょゆう) - 字は武仲 陽城の人 箕山に住んだという隠者。堯から帝位を譲られるも断り、汚らわしいことを聞いたとして流れに耳を洗う。
  ・肩吾(けんご) - 道を得た賢人 大宗師篇(06-03)には、泰山に住む神となったとある。
  ・連叔(れんしゅく) - 道を得た賢人
  ・接輿(せつよ) - 楚の人 狂人のような振る舞いから、狂接輿(きょうせつよ)と呼ばれる。孔子を批判する人物として登場。(『論語』微子)
  ・恵子(けいし) - 恵施(けいし) 名家の代表的人物で、一時は魏の宰相を務めたが、張儀の連衡策に反対し失脚。 荘子の好敵手で友人。

02 斉物論篇(せいぶつろん) - 「物を斉(ひと)しくする論」という意味 →万物斉同
├01 南郭子綦(なんかくしき)と顔成子游(がんせいしゆう)(1) - 天籟(てんらい)と地籟(ちらい)
├02 大知は閑閑たり - ひとたび其の成形を受くれば、化せずして尽くるを待たん。
├03 彼(あれ)と是(これ)の違い
├04 天地一指、万物一馬 - 朝三暮四  至れり尽くせり、以て加うべからず。
├05 秋毫(しゅうごう)の末より大なるは莫(な)く、大山(泰山)を小と為す。
├06 道は未だ始めより封あらず、言は未だ始めより常あらず。
├07 知は其の知らざる所に止まれば至れり。
├08 堯(ぎょう)と舜(しゅん)(1) - 太陽の徳にも勝る者
├09 齧欠(げいけつ)、王倪(おうげい)に問う(1) - 誰が本当の味や美を知っているのか
├10 齧欠、王倪に問う(2) - 至人は神なり。
├11 瞿鵲子(くじゃくし)、長梧子(ちょうごし)に問う - 卵を見て時夜を求む。  夢に酒を飲む者は…
├12 罔両(もうりょう・うすかげ)と景(かげ) → 寓言篇27-05
└13 胡蝶の夢 - 荘周、夢に胡蝶となる。 →胡蝶の夢

  ・南郭子綦(なんかく・しき) - 楚の賢者 城郭の南に住んでいたので南郭と号する。南伯子綦、南伯子葵とも。
  ・顔成子游(がんせい・しゆう) - 姓は顔成、名は偃、字は子游 南郭子綦の弟子。 孔門十哲のひとり子游(言偃)とは別人。
  ・舜(しゅん) - 姓は姚(よう)、諱は重華(ちょうか) 五帝の一人 堯から譲られ帝位に就き、後、禹(う)に帝位を譲る。
  ・齧欠(げいけつ) - 王倪の弟子で、許由の師。 天地篇に蒲衣子→王倪→齧欠→許由→堯(→意而子ら)という師弟関係が見える。
  ・王倪(おうげい) - 齧欠の師で、蒲衣子(ほいし・被衣)の弟子。
  ・瞿鵲子(くじゃくし) - 架空の人物 一説に孔子門下(孔子に易を伝授された商瞿のことか?)
  ・長梧子(ちょうごし) - 則陽篇(25-05)に長梧は地名とある。

03 養生主篇(ようせいしゅ) - 「生命を養う真の生き方」についてを説く
├01 生には涯(かぎり)あり、知には涯なし。
├02 庖丁(ほうてい)と魏の恵王 - 庖丁解牛(ほうていかいぎゅう) →庖丁解牛
├03 一本足の右師(ゆうし) - 天なるか、人なるか。
├04 沢雉(たくち) - 樊中(ばんちゅう)に畜(やしな)わるるを蘄(期・もと)めず。
├05 老子(老聃・ろうたん)死す - 秦失(しんいつ)これを弔す 得るは時なり、失うは順なり。 時に安んじて順に処れば、哀楽も入る能(あた)わず。
└06 火は燃え続ける

  ・庖丁(ほうてい) - 庖(料理番)の丁氏 文惠君(魏恵王)に養生を悟らせる。中国では包丁のことを菜刀や菓刀と呼び、庖丁は料理人を指す。
  ・魏の恵王 - 梁恵王 魏の第3代君主 姓は姫、氏は魏、諱は罃(おう) 秦の侵攻により、安邑から大梁へ遷都。以後、魏は「梁」とも呼ばれる。
  ・老聃(ろうたん) - 老子 道家の祖 姓は李、名は耳、字は聃または伯陽 楚の人 周の衰退をみて国を去り『老子』を著したという伝説的人物。

04 人間世篇(じんかんせい) - 「人の交わる世」という意味 処世術を説く
├01 孔子(孔丘仲尼)と顔回(がんかい・顔子淵)(1) - 顔回、衛へ旅立たんとす
├02 楚の葉公子高(しょうこうしこう)、孔子に使者の心得を問う
├03 顔闔(がんこう)、蘧伯玉(きょはくぎょく)に問う - 蟷螂の臂(ひじ・うで)を怒らして以て車轍(しゃてつ)に当たる。 → 天地篇12-10
├04 匠石(しょうせき・棟梁の石氏)と神木 - 不材の木(1)
├05 南伯子綦(なんぱくしき・南郭子綦と同人)と神木 - 不材の木(2)
├06 良木は中道にして斧斤(ふきん)に夭(よう)す - 不材の木(3)
├07 支離疏(しりそ) - 不材の木(4)
└08 孔子と狂接輿(きょうせつよ) - 不材の木(5) 無用の用

  ・孔子 - 儒家の始祖 姓は孔、名は丘、字は仲尼 魯の人 貧賤の出であったがよく礼学を修め、多くの門弟を抱え諸国を教化して巡った。
  ・顔回(がんかい) - 字は子淵 魯の人 路地裏のあばら家に住み、箪食瓢飲して道を修めたという。孔子に後継者として嘱望されるも早世した。
  ・葉公子高(しょうこう・しこう) - 姓は沈(しん)、名は諸梁(しょりょう)、字は子高 楚の王族 葉に封じられたので葉公という。
  ・顔闔(がんこう) - 魯の賢人で、衛の霊公の太子蒯聵(かいかい・後の荘公)の教育係となる。
  ・蘧伯玉(きょ・はくぎょく) - 姓は蘧、名は瑗(えん)、字は伯玉 衛の霊公のときの賢臣。孔子や史鰌らにも君子として称えられる。(則陽25-07)
  ・匠石(しょうせき) - 大工の棟梁の石氏(石さん)
  ・支離疏(しり・そ) - 支離滅裂・バラバラ、疏はうとい 間抜けなひどい不具者の意味。荘子には生まれつきの有り様としての不具者の話が多い。

05 徳充符篇(とくじゅうふ) - 「徳が内に充ちた符(しるし)」という意味
├01 孔子と常季(じょうき)、王駘(おうたい)を語る - 人は流水に鑑(かんが)みること莫(な)く、止水に鑑みる。明鏡止水
├02 子産(しさん)と申徒嘉(しんとか) - 鑑明らかなれば則ち塵垢(じんこう)止まらず、止まれば則ち明らかならず。
├03 孔子と叔山無趾(しゅくざんむし) - 叔山無趾、老子に告ぐ
├04 孔子と魯の哀公(あいこう)、哀駘它(あいたいだ)を語る
├05 闉跂支離無脤(いんきしりむしん)と甕盎大癭(おうおうたいえい・盎の正字、皿でなく瓦) - 自然の容貌 性(うまれつき)の形
└06 恵子と荘子(3) - 道これに貌(すがた)を与え、天これに形を与う。

  ・常季(じょうき) - 孔子の弟子?
  ・王駘(おうたい) - 魯の人 刑により足の筋を切られた兀者(ごつしゃ)であるが、大変に人望があり、孔子と並ぶほどの弟子を抱えていたという。
  ・子産(しさん) - 姓は姫、氏は公孫、名は僑(きょう)、字は子産 鄭(てい)の公族・宰相 史上初の成文法を制定し、善政を行ない慕われた。
  ・申徒嘉(しんと・か) - 足切りの刑を受けた不具者で、子産と同じく伯昏無人(はくこんむじん)の門下生。漢の申屠嘉とは当然別人。
  ・叔山無趾(しゅくざんむし) - 魯の人 刑により足の筋を切られた兀者。老子とも親しい賢人。
  ・魯の哀公(あいこう) - 魯の25代君主 姓は姫、諱は将(蒋) 孔子が仕えた定公の子。三桓氏を討たんと謀るも露見し、越に逃れる。
  ・哀駘它(あいたいだ) - 衛の人 「悪(みにく)きを以て天下を駭(おどろ)かす」というほどの醜男(ぶおとこ)。しかし何故か男にも女にも大モテ。
  ・闉跂支離無脤(いんきしりむしん) - せむしで足はひん曲がり、三つに口が裂けた不具者。
  ・甕盎大癭(おうおうたいえい・盎の正字、皿でなく瓦) - ごつごつとした大きな瘤(こぶ)だらけの不具者。

06 大宗師篇(だいそうし) - 「大いなる宋(中心)の師」という意味 即ち「道」を説く
├01 真人とは(1)
├02 泉涸れて、魚相い与(とも)に陸に処(お)り…
├03 道は情(実)あり信あり、為すなく形なく、受くべきも伝うべからず。
├04 南伯子葵(なんぱくしはつ・南郭子綦と同人?)と女偊(じょう) - 道は将(送・おく)らざるなく、迎えざるなし、毀(こぼ)たざるなく、成さざるなし。
├05 子祀(しし)、子輿(しよ)、子犁(しり)、子来(しらい)、心に逆らう莫(な)く、相い与(とも)に友と為る。 →莫逆之友 逆の友 奥村助右衛門
├06 子桑戸(しそうこ)、孟子反(もうしはん)、子琴張(しきんちょう) - 子桑戸死して、孔子、弔いに子貢(しこう)を使わす
├07 孔子と顔回(2) - 孟孫才(もうそんさい)の喪礼(そうれい)
├08 意而子(いじし)、許由(きょゆう)に見(まみ)ゆ
├09 孔子と顔回(3) - 顔回、坐忘(ざぼう)す。
└10 子輿(しよ)と子桑(しそう) - 父なるか、母なるか、天なるか、人なるか。

  ・女偊(じょう) - 真実の道を聞き、子供のように若々しい姿を保つ賢者。
  ・子祀(しし) - 莫逆四友の一人 子輿を見舞う
  ・子輿(しよ) - 莫逆四友の一人 俄(にわ)かに病み、身体は曲がりくねって波打ち酷い有り様になるも、その変化を憎まずに受け入れる。
  ・子犁(しり) - 莫逆四友の一人 子来を見舞う
  ・子来(しらい) - 莫逆四友の一人 俄(にわ)かに病み、ぜいぜいと息をして苦しむも、その変化を憎まずに受け入れる。
  ・子桑戸(しそうこ) - 莫逆三友の一人 山木篇(20-05)などにも名が見える賢人。『楚辞』には桑扈とある。
  ・孟子反(もうしはん) - 莫逆三友の一人 『論語』雍也に見える孟之反? 子桑戸が死ぬと子琴張と歌っていたという。
  ・子琴張(しきんちょう) - 莫逆三友の一人 子桑戸の弔いで琴を奏で孟子反と吟じ、子貢の世俗の礼儀を笑う。『孟子』尽心下に見える琴張?
  ・子貢(しこう) - 姓は端木(たんぼく)、名は賜(し) 衛の人 言論弁舌に優れ、魯・衛の宰相を歴任。孔子門下で最も富み、財政を援助する。
  ・孟孫才(もうそん・さい) - 母親の死に祭し、哭しても涙はながさず、型通りの葬儀で簡素に弔う。生死の一体性を悟っていた人物。
  ・意而子(いじし) - 堯に仁義の実践を学ぶも、許由に否定される。
  ・子輿(しよ) - 長雨に塞いでいるであろう子桑を見舞う。 前出の莫逆四友の一人か?
  ・子桑(しそう) - 「(自分をここまで貧しくしたのは誰だろう?)父なるか、母なるか、天なるか、人なるか」と嘆き歌う。 子桑戸か?

07 応帝王篇(おうていおう) - 「帝王にふさわしい」という意味 人為による政治の否定を説く
├01 齧欠(げいけつ)、王倪(おうげい)に問う(2) - 蒲衣子(ほいし)に告ぐ
├02 肩吾(けんご)、狂接輿(きょうせつよ)に見(まみ)ゆ
├03 天根(てんこん)、無名人(むめいじん)に問う - 天下の治めかた
├04 陽子居(ようしきょ)と老子(1) - 大上は下これ有るを知るのみ。(『老子』17章)
├05 列子(れっし)と壺子(こし)と季咸(きかん)
├06 名の尸(し)と為ることなかれ。
└07 渾沌(こんとん)、七竅(しちきょう)に死す - 儵(しゅく)と忽(こつ)、渾沌の徳に報いることを謀る →渾沌之死

  ・蒲衣子(ほいし) - 被衣子 王倪の師とされる賢者 天地篇に蒲衣子→王倪→齧欠→許由→堯(→意而子ら)という師弟関係が見える。
  ・天根(てんこん) - 無名人に天下の治めかたを尋ねているが、帝王の類か?
  ・無名人(むめいじん) - 隠者 天根の問いに呆れながらも、治世を説く。
  ・陽子居(よう・しきょ) - 楊子(楊朱、字は子居)のことか?
  ・列子(れっし) - 道家 姓は列、名は御寇(ぎょこう) 鄭の人 著書『列子』八巻が伝わるが、後世の作であろう。荘子では風に乗り、仙郷に遊ぶ。
  ・壺子(こし) - 壺丘子林 列子・伯昏無人の師とされる人物。道を得た賢者だが、この話では非常に人間臭くかかれる。
  ・季咸(きかん) - 巫咸 鄭国の巫(みこ)で、多くの古典に名が見える。
  ・渾沌(こんとん) - 中央の帝 自然な様をあらわす。
  ・儵(しゅく) - 南海の帝 儵も忽も、束の間、瞬間、わずかな間の意味で、人的な作為をあらわす。
  ・忽(こつ) - 北海の帝 渾沌の厚いもてなしに、人為的な智慧で報い、かえって殺してしまう。

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■外篇 - 15篇105章
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外篇・雑篇は、内篇とは異なり各篇の初字を篇名としており、『論語』などの場合と同じで特別な意味はない。

08 駢拇篇(べんぼ) - 駢拇枝指(べんぼしし) 生まれつき指がくっついていたり、6本あるような人
└01 自然の性(生まれつき) - 仁義は其れ人の情に非ざるかな。

09 馬蹄篇(ばてい) - 馬の蹄(ひづめ)
└01 調教師伯楽(はくらく) - 自然の徳(もちまえ)と聖人の過ち

  ・伯楽(はくらく) - 伝説的な相馬眼を持つ馬の調教師。元は天馬を司る星の名。 秦の穆公(ぼくこう)に仕えた孫陽のことか?

10 胠篋篇(きょきょう) - 篋(つづら)を胠(ひら)く
└01 泥棒と篋(つづら) - 聖人生まれて大盗起こる。 仁義を攘(はら)い棄つれば、而(すなわ)ち天下の徳は始めて玄同せん。

11 在宥篇(ざいゆう) - 宥(あるがまま)に宥(放任して拘束しない)
├01 天下を在宥(ざいゆう)するを聞くも、天下を治むるを聞かざるなり。
├02 崔瞿(さいく)、老子に問う - 人の心をしばりつけるな
├03 黄帝(こうてい)、仁義を以て人の心を攖(しば)れり - 聖人の罪 聖を絶ち知を棄つれば、而(すなわ)ち天下大いに治まる。
├04 黄帝、広成子(こうせいし)に至道を問う
├05 雲将(うんしょう)、たまたま鴻蒙(こうもう)に遭う - 徒(た)だ無為に処(お)れば、而(すなわ)ち物は自ずから化す。
├06 世俗の人
├07 大人の教え - 有を覩(み)る者は昔の君子なり、無を覩(み)る者は天地の友なり。
└08 無為にして尊き者は天道なり。

  ・崔瞿(さいく) - 老子の弟子であろうが不明。
  ・黄帝(こうてい) - 姓は公孫(こうそん)、諱は軒轅(けんえん) 五帝の筆頭 伝説上の聖王で、多くの諸侯に祖として崇められる。
  ・広成子(こうせいし) - 釈文に老子の別号であるという。 一般に『封神演義』での活躍が知られるが、こちらは明代に成立。
  ・雲将(うんしょう) - 雲の大将であるという。
  ・鴻蒙(こうもう) - 自然の元気の擬人化 至道の体得者。

12 天地篇(てんち) - 儒との妥協的説話を含む
├01 天地は大なりと雖(い)えども、其の化は均(ひと)しきなり。
├02 夫子(ふうし)曰く - 無為にしてこれを為すを道と謂う。
├03 王徳の人
├04 黄帝、崑崙の丘に玄珠(げんじゅ)を遺(わす)れる - 知、離朱(りしゅ)、喫詬(かいこう)、象罔(しょうもう)
├05 堯(ぎょう)、齧欠(げいけつ)を迎えんとし、許由(きょゆう)に問う
├06 堯と封人(ほうじん・さきもり) - 男子多ければ則ち懼(おそ)れ多く、富めば則ち事多く、寿なれば則ち辱ずかしめ多し。
├07 禹(う)、伯成子高(はくせいしこう)を訪ねる
├08 泰初に無あり。
├09 孔子と老子(1) - 物を忘れ天を忘るる、其の名を亡己(ぼうき)と為す。
├10 将閭菟(しょうりょべん)、季徹(きてつ)に見える - 蟷螂の臂(ひじ・うで)を怒らして以て車轍(しゃてつ)に当たる。 →人間世篇04-03
├11 子貢(しこう)と圃夫(ほふ・農夫)と槹(はねつるべ) - 機械ある者は必ず機事あり、機事ある者は必ず機心あり。
├12 諄芒(じゅんぼう)、苑風(えんぷう)に遇う
├13 門無鬼(もんむき)と赤張満稽(せきちょうまんけい)、周武王の帥(行軍)を観る
├14 孝子は其の親に諛(おもね)らず、忠臣は其の君に諂(へつ)らわず、臣子の盛んなり。
└15 性を失うに五あり - 五色、五声、五臭、五味、取捨

  ・知(ち) - 智慧を巡らす者の意 →知北遊篇22-01
  ・離朱(りしゅ) - 遠くを見通す者の意 『孟子』の離婁章句の離婁とは、離朱のこと(朱と婁とは発音が近く通じた)。
  ・喫詬(かいこう) - 弁舌の立つ者の意
  ・象罔(しょうもう) - 「象(かたち)が 罔(な)い」で、薄ぼんやりとした者の意
  ・禹(う) - 姓は姒(じ)、諱は文命(ぶんめい) 五帝の一人、顓頊(せんぎょく)の孫で、鯀(こん)の子。舜より帝位を譲られ、夏王朝を起こす。
  ・伯成子高(はくせい・しこう) - 堯と舜には自ら進んで仕えたが、禹の代になると辞して田畑を耕して暮らした。 一毫(いちごう)を以て物を利せず
  ・将閭菟(しょうりょ・べん・正字は草冠に勉) - 将閭子 名は菟(正字は草冠に勉) 『芸文志』に、学を好み、書を著したとある。
  ・季徹(きてつ) - 魯の季氏一族であろうというが、不詳。
  ・諄芒(じゅんぼう) - 純朴で、ぼんやりしてとらえどころがなく、世俗を超越した者の意。
  ・苑風(えんぷう) - 小風の意 俗世界でぶらぶら遊ぶ者とされる。
  ・門無鬼(もんむき) - 不詳
  ・赤張満稽(せきちょうまんけい) - 不詳
  ・周の武王(ぶおう) - 姓は姫(き)、諱は発(はつ) 父・文王の後を継ぎ、呂尚(太公望)らとともに、殷の帝辛(紂王)を討ち、周王朝を立てる。

13 天道篇(てんどう)
├01 天道は運(めぐ)りて積む所なし、故に万物成る。
├02 虚静恬淡(きょせいてんたん)、寂漠無為(せきばくむい)は、天地の平にして道徳の至(質)なり。 →虚静恬淡
├03 大本大宗
├04 帝王の徳 - 帝王の徳は、天地を以て宗と為し、道徳を以て主と為し、無為を以て常と為す。
├05 本は上に在り、末は下に在り - 要は主に在り、詳は臣に在り。
├06 堯(ぎょう)と舜(しゅん)(2) - 子は天の合なり、我は地の合なり。
├07 孔子と老子(2) - 孔子、書を周室に蔵せんとす
├08 士成綺(しせいき)、老子に見(まみ)える - 我を牛と呼べば、而(すなわ)ちこれを牛と謂(おも)い、我を馬と呼べば、而ちこれを馬と謂わん。
├09 道は大に於いて終(きわ・窮)まらず、小に於いて遺(のこ)さず、故に万物備わる。
└10 斉の桓公(かんこう)と輪扁(りんべん・車大工の扁氏) - 君の読む所の者は、古人の糟魄(そうはく)のみ。 書は語に過ぎず。 対:尚友(孟子)

  ・士成綺(しせいき) - 老子の教えを受けるため、遠路はるばる訪ねて来る。人物については不詳。
  ・斉の桓公(かんこう) - 斉の16代君主 姓は姜、氏は呂、諱は小白 管仲、鮑叔牙らの補佐で国を富強にし、春秋時代初の覇者となった。
  ・輪扁(りんべん) - 車大工の扁氏(扁さん) 庖丁(ほうてい・料理番の丁さん 養生主篇03-02)と同じで、姓(氏)が「扁」、「輪」は職業を指す。

14 天運篇(てんうん)
├01 巫咸招(ふかんしょう・招の正字は示偏)の言葉 - 天に六極五常あり。
├02 商の大宰蕩(だいさいとう)、仁を荘子に問う - 虎狼も仁なり。
├03 北門成(ほくもんせい)、黄帝の音楽を聴く
├04 顔回、師金(しきん)に問う - 西施捧心(せいしほうしん)
├05 孔子と老子(ろうたん・老子)(3) - 古の至人は、道を仁に仮(か)り、宿を義に託し、以て逍遥の虚(墟)に遊ぶ。
├06 孔子と老子(4) - 鵠(つる・鶴)は日ごとに浴せざるも白く、烏(からす)は日ごとに黔(くろ)めざるも黒し。
├07 孔子と老子(5) - 吾、竜を見たり  子貢、孔子の紹介で老子に見(まみ)える
└08 孔子と老子(6) - 六経(詩・書・礼・楽・易・春秋)は、先王の陳迹(ちんせき・古い足跡)なり。『六経』の初出

  ・巫咸招(ふかん・しょう・招の正字は示偏) - 巫咸は殷の巫(みこ)で、伊尹(いいん)の子、伊陟(いちょく)らと帝太戊に仕えた賢臣。
  ・商の大宰蕩(だいさいとう) - 宋国(元の商・殷)の宰相の蕩氏
  ・北門成(ほくもん・せい) - 黄帝の臣下 不詳。
  ・師金(しきん) - 楽師の金氏(金さん)
  ・西施(せいし) - 古代四大美女のひとり 越王勾践の参謀・范蠡の策で、呉王夫差に送られる。 顰(ひそみ)に倣(なら)う →西施捧心

15 刻意篇(こくい)
└01 士人の型と求める道

16 繕性篇(ぜんせい)
└01 徳は和なり、道は理なり - 徳の容(い)れざるなきは仁なり、道の理(おさ)めざるなきは義なり。

17 秋水篇(しゅうすい) - 内篇にある雄大さを持つ名篇 荘子(2)外篇(岩波文庫)には、ここまでを収録
├01 河伯(かはく)と北海若(ほっかいじゃく) - 真の道に反(かえ)る
├02 夔(き・架空の一本足の妖怪)と百足(むかで・原典は虫偏に玄)と蛇と風
├03 孔子一門、匡(きょう)で宋人に囲まれる
├04 公孫竜(こうそんりゅう)と魏牟(ぎぼう) - 坎井(かんせい・正字は土偏に臽)の鼃(あ・蛙) →坎井之蛙 →井底之蛙 →不知大海
├05 楚に神亀あり - 吾(われ)将(まさ)に尾を塗中(とちゅう)に曳(ひ)かんとす →曳尾塗中
├06 恵子と荘子(4) - 恵子、梁(りょう・魏)に相(宰相)たり、荘子、往きてこれに見ゆ。 南方に鳥あり、其の名を鵷雛(えんすう)という。
└07 恵子と荘子(5) - 子は魚に非ず、安(いずくん)ぞ魚の楽しみを知らん。

  ・河伯(かはく) - 黄河の神
  ・北海若(ほっかいじゃく) - 北海(渤海・ぼっかい)の神
  ・公孫竜(こうそん・りゅう) - 姓は公孫、名は龍、字は子秉(しへい) 趙の人 名家の代表的人物。「白馬非馬」「堅白同異」などの説で知られる。
  ・魏牟(ぎぼう) - 魏の公子で、賢者としてその名を知られる。中山(ちゅうざん)の地に封じられた為、中山公子牟とも呼ばれる。

18 至楽篇(しらく) - 荘子(3)外篇・雑篇(岩波文庫)はこの篇から
├01 天下に至楽有りや有るなきや。
├02 恵子と荘子(6) - 荘子の妻死す 荘周盆を鼓して歌う  人且(まさ)に偃然(えんぜん・安然)として巨室に寝(い)ねんとす。
├03 支離叔(しりしゅく)と滑介叔(こつかいしゅく) - 瘤(こぶ)其の左肘(さちゅう)に生ず。 生は仮借(かしゃ)なり。
├04 荘子と髑髏(どくろ)
├05 顔回、斉へ旅立つ - 褚(ちょ.・嚢)の小なる者は、以て大を懐(つつ)むべからず。 魯侯、海鳥を迎える。
└06 列子と髑髏

  ・支離叔(しり・しゅく) - でたらめなひどい不具者 叔は字(あざな) 忘形の人
  ・滑介叔(こつかい・しゅく) - 乱れて独立する者 叔は同じく字(あざな) 忘知の人

19 達生篇(たっせい)
├01 生の情(まこと)に達する者は、生の以て為すなき所を務めず。 世を棄つれば則ち累(わずら)いなし。
├02 列子、関尹(かんいん・尹喜)に問う - 至人、其の天を守ること全く、其の神は郤(げき・隙)なし。
├03 孔子、痀僂(せむし)の蜩(せみ・蝉・ひぐらし)承(と・取)りを見る
├04 孔子と顔回(4) - 善く泳ぐ者の数(すみやか)に能(よ)くするは、水を忘るればなり。
├05 周の威公(いこう)、田開之(でんかいし)に祝腎(しゅくじん)の教えを聞く
├06 祝宗人(しゅくそうじん・祭主・神主の意)と彘(てい・豚・いのこ)
├07 桓公(かんこう)、管仲(かんちゅう)と沢に田(かり)して鬼を見る - 病は気から
├08 紀渻子(きせいし)、闘鶏を養う - これを望むに木鶏に似たり。木鶏
├09 孔子、呂梁(りょりょう・地名・流れの名)の滝で泳ぐを観る
├10 梓慶(しけい)、木を削りて鐻(きょ・鐘掛け)を為(つく)る - 天を以て天に合す。
├11 東野稷(とうやしょく)、御(ぎょ)を以て衛の荘公に見(まみ)ゆ - 顔闔(がんこう)曰く、稷の馬、将に敗れんとす。
├12 工棰(こうすい・正字は人偏に垂)、施(めぐ)らせば而(すなわ)ち規矩(きく)に蓋(あ)う - 足を忘るるは履(くつ)の適(てき)なり。
└13 孫休(そんきゅう)、扁慶子(へんけいし)に自らの不遇を洩らす - 為(な)して恃(たの)まず、長じて宰(さい)せず。

  ・関尹(かんいん) - 尹喜 秦の人 函谷関の令(長官)で、西方へ向かう老聃に請い、『老子』を著させた。伝説では以後、老子に従う。
  ・周の威公(いこう) - 姓は姫、諱は竈(そう) 考王の弟である桓公の子。
  ・田開之(でん・かいし) - 祝腎の門弟。
  ・祝腎(しゅくじん) - 養生の方法を得ていたという人物。
  ・管仲(かんちゅう) - 氏は管、名は夷吾、字は仲 鮑叔と管鮑の交わりを結び、斉の桓公を補佐して春秋時代初の覇者に押し上げる。
  ・紀渻子(きせいし) - 闘鶏の調教師 『列子(黄帝篇)』にも同様の話があり、周の宣王のために鶏を養ったという。
  ・梓慶(しけい) - 梓は官名、細工職人の慶氏(慶さん)
  ・東野稷(とうや・しょく) - 衛の御者 『荀子(哀公篇)』では東野畢(とうやひつ)とする。
  ・衛の荘公(そうこう) - 衛の11代君主 姓は姫、諱は揚 武公の子。
  ・工棰(こうすい・正字は人偏に垂) - 細工師の棰氏 堯の時代の名工だという。
  ・孫休(そんきゅう) - 不詳 見聞の狭い俗世的な人物としてかかれる。
  ・扁慶子(へんけいし) - 姓は扁、慶子は字という その器ではない孫休に、至人の道を説いたことを後悔する。

20 山木篇(さんぼく)
├01 周(荘周・荘子)は将に夫(か)の材と不材との間に処(お)らんとす。
├02 市南宜僚(しなんぎりょう)、魯侯(ろこう)に見(まみ)ゆ - 魯国は独(そ・其)れ君の皮に非ざるか。 →豊狐文豹
├03 北宮奢(ほっきゅうしゃ)、衛の霊公の為に賦斂(ふれん)して鐘を為(つく)る - 来るものは禁ずる勿(な)く、往くものは止むる勿(な)し。
├04 孔子、陳と蔡の間に囲まれ、七日火食せず(1) - 東海に鳥あり、其の名を意怠(いい)と曰う  直木は先ず伐られ、甘井は先ず竭(つ)く。
├05 孔子と子桑雩(しそうこ・子桑戸・正字は雨冠に乎) - 君子の交わりは淡きこと水の如し、小人の交わりは甘きこと醴(れい・甘酒)の如し。
├06 荘子と魏王 - 貧なり、憊(つか)れたるに非ざるなり。 ボロは着てても心は錦 →譲王篇28-08(原憲と子貢)
├07 孔子、陳と蔡の間に囲まれ、七日火食せず(2) - 孔子と顔回(5) - 天の損を受くるなきは易く、人の益を受くるなきは難し。
├08 荘子、栗泥棒になる - 噫(ああ)、物は固(もと)より相い累(るい・害)し、二類は相い召(まね)くなり。
└09 陽子(ようし・楊子)、旅宿に美人と醜女を見る - 行い賢にして自ら賢とするの心を去れば、安(いず)くに往くとして愛せられざらんや。

  ・市南宜僚(しなん・ぎりょう) - 姓は熊(ゆう)、名は宜僚 楚の(恵王に仕えた?)賢人。お手玉の名人で、白公勝の乱を弄丸して避ける。
  ・魯侯 - 魯国の君主 不詳
  ・北宮奢(ほっきゅう・しゃ) - 姓は北宮、名は奢 衛の大夫
  ・衛の霊公 - 衛の27代君主 姓は姫、諱は元 君としては凡庸で、佞臣を近づけた。 孔子を迎えて、魯と同じ俸禄を与えたが、後には避ける。
  ・陽子(ようし・楊子) - 道家 姓は楊、名は朱、字は子居 人間の欲望を肯定する為我説(自愛説)を主張。「一毛不抜」の故事で知られる。

21 田子方篇(でんしほう)
├01 田子方(でんしほう)と魏の文侯 - 吾が学びし所の者は、真(まこと)に土梗(どこう)のみ。
├02 魯の人、温伯雪子(おんぱくせっし)に見(まみ)えんことを請う - 中国の君子は礼儀に明らかなるも、人の心を知るに陋(ろう・拙)なり。
├03 孔子と顔回(6) - 故(もと)の吾を忘るると雖(いえど)も、吾に忘れざる者ありて存す。
├04 孔子と老子(7) - 老子の沐浴  丘(孔丘・孔子)の道に於けるや、其れ猶(な)お醯鶏(けいけい・ぼうふら)のごときか。
├05 荘子、魯の哀公に見(まみ)ゆ - 魯には儒少なし。
├06 百里奚(ひゃくりけい)と舜
├07 宋の元君(げんくん)と画工
├08 周の文王、一老人の釣りするを見る - 太公望(たいこうぼう)
├09 列子(れっし)と伯昏無人(はくこんむじん)(1) - 射の射と不射の射 →中島敦『名人伝』
├10 肩吾(けんご)と孫叔敖(そんしゅくごう) - 其の来るや却(しりぞ)くべからず、去るや止(とど)むべからざるなり。
└11 楚王と凡君 - 凡(ぼん・春秋時代の小国)の亡ぶるや、以て吾が存を喪(うしな)うに足らず。

  ・田子方(でん・しほう) - 姓は田、名は無択、字は子方 魏文侯の学師。子夏→田子方→荘子へとつながる儒から道への系譜があったともいう。
  ・魏の文侯 - 姓は姫、氏は魏、諱は斯 周の威烈王から趙・韓とともに諸侯に封じられ魏国の初代君主となる。学を好み人材に恵まれた明君。
  ・温伯雪子(おんぱくせっし) - 姓は温、名は伯、字は雪子 楚の人という
  ・百里奚(ひゃくり・けい) - 秦の穆公(ぼくこう)に仕えた名宰相 一時奴隷に身を落とし、羊の皮5枚で買われたことから五羖(ごこ)大夫と号する。
  ・宋の元君(げんくん) - 元公? 宋の27代君主 姓は子、氏は載、諱は佐
  ・周の文王 - 姓は姫、諱は昌 季歴の子で、武王の父 紂王により羑里に幽閉されるも、許され西伯に封じられた。仁政で周建国の基盤を築く。 
  ・太公望(たいこうぼう) - 姓は姜、氏は呂、諱は尚、字は子牙 周公旦らとともに文王・武王を補佐し、殷を滅ぼす。後、斉に封じられ始祖となる。
  ・伯昏無人(はくこんむじん) - 伯昏瞀人 列子の兄弟子で、ともに壺子に学んだ。子産、申徒嘉らの師とされる(徳充符篇05-02)
  ・孫叔敖(そんしゅく・ごう) - 蔿艾猟(いがいりょう) 姓は羋、氏は蔿、名は敖、または艾猟 楚屈指の賢相で、荘王を五覇のひとりに押し上げる。

22 知北遊篇(ちほくゆう) - 希言は自然なり
├01 知(ち・知恵者)、無為謂(むいい)と狂屈(きょうくつ)に道を問う - 知る者は言わず、言う者は知らず。 弁ずるは黙するに若(し)かず。
├02 天地自然の働き
├03 齧欠(げいけつ)、被衣(ひい・蒲衣子と同人)に道を問う - 言未だ卒(おわ)らざるに、齧欠睡寐(すいび)す。
├04 舜、道を丞(じょう)に問う - 汝の身すら汝の有に非ざるなり、何ぞ夫(か)の道を有するを得んや。
├05 孔子と老子(8) - 至道を問う  万物は皆な往きて焉(こ)れに資(と)るも匱(とぼ)しからず。
├06 中国に人あり - 直(た)だ且(しば)らく人と為り、将に宗(そう・根本・根源)に反(かえ)らんとす。 白駒の郤(げき・隙)を過ぐるが若(ごと)し。
├07 東郭子、道の在る所を問う - 在らざるところなし。 螻蟻(ろうぎ)に在り、稊稗(ていはい)に在り、瓦甓(がへき)に在り、屎溺(しにょう)に在り。
├08 何荷甘(かかかん・何の正字は女偏に可)と神農(しんのう)、老竜吉(ろうりゅうきつ)に学ぶ - 其の狂言を蔵して死せるを知る。
├09 泰清(たいせい)、無窮(むきゅう)と無為(むい)に道を問う - 道は問うことなく、問うも応うることなし。
├10 光耀(こうよう)と無有(むゆう) - 予(わ)れ能(よ)く無有(あ)りとするも、未だ無も無しとする能(あた)わず。
├11 鉤(こう・戈戟・ほこ)を捶(う)つ者 - これを用(はたら)かす者は、用かざる者に仮(か)るなり。
├12 孔子と冉求(ぜんきゅう ) - 古(いにし)えも猶(な)お今のごときなり。 古えなく今なく、始めなく終わりなし。
└13 孔子と顔回(7) - 至言は言を去り、至為は為を去る。

  ・無為謂(むいい) - 「為す無く、謂う無し」 無為自然の擬人化。
  ・狂屈(きょうくつ) - 世俗を超越した生き方をする者。
  ・丞(じょう) - 舜の学師 または官名
  ・東郭子(とうかくし) - 城郭の東に住まいする先生の意 事跡は不詳
  ・何荷甘(か・かかん) - 何の正字は女偏に可 姓は何、荷甘は字という。
  ・神農(しんのう) - 農業と医学の神で、三皇の一人に数えられる 胴体が透けており、身をもって百草の害毒を調べあげたという。
  ・老龍吉(ろうりゅうきつ) - 道の体得者 ここでは神農らの師とされ、狂言(狂的な真実の言葉)を蔵して死す。
  ・泰清(たいせい) - 太清 おおいに澄みきった者の意。
  ・無窮(むきゅう) - 無のきわまりの擬人化。
  ・無為(むい) - 自然のままに任せて、手を加えない者、作為のない者の意 道家の理想とする境地のひとつ。
  ・光耀(こうよう) - 光り輝く智慧の擬人化。
  ・無有(むゆう) - 一説に名を無無とする 無の擬人化。
  ・冉求(ぜんきゅう) - 姓は冉、名は求、字は子有 孔門十哲の一人であり、学をもって季康子に仕えた。

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■雑篇 - 11篇97章
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23 庚桑楚篇(こうそうそ)
├01 老子の弟子、庚桑楚(こうそうそ)、畏塁(わいるい)の山に居する
├02 天民天子
├03 学ぶ者は、其の学ぶ能(あた)わざる所を学ぶ - 知は、其の知る能(あた)わざる所に止まれば、至れり。
├04 無名に行う者は、唯(こ)れ康(つね)にして光あり。
├05 天門は無有なり。
├06 古の人、其の知至たる所あり - 至れり尽くせり、以て加うべからず。 →斉物論篇02-04
├07 用を以て知と為し、不用を以て愚と為す。
├08 市人の足を蹍(ふ)めば、則ち辞するに放驁(ほうごう)を以てす - 至礼は人とせざるあり。
├09 志の勃(みだ)れを徹り、心の謬(もつ)れを解き、徳の累(わずら)いを去り、道の塞がりを達す。
├10 道とは徳の欽なり。
├11 羿(げい)と聖人の拙さ - 聖人は天に工(たくみ)なるも、人に拙(つたな)し。
└12 羿と雀 - 天下を以て籠(ろう)と為せば、則ち雀も逃るる所なからん。 →法家批判

  ・庚桑楚(こうそう・そ) - 亢桑子 老子の弟子で、その道を偏得(へんとく)した。畏塁の民に「庶幾(ほと)んど聖人か」と称えられ、困惑する。
  ・羿(げい) - 伝説上の神 弓の名手で九つの太陽を射落とした。妻の嫦娥(じょうが)に裏切られ、最期は弟子の逢蒙(ほうもう)に射殺される。

24 徐無鬼篇(じょむき)
├01 徐無鬼(じょむき)、魏の武侯を労(ねぎら)う(1) - 国馬と天下の馬
├02 徐無鬼、魏の武侯を労う(2) - 民を愛するは、民を害するの始めなり 義を為し兵を偃(や)むるは、兵を造(おこ)すの本なり。
├03 黄帝と牧馬の童子 - 天下を為(おさ)むる者は、亦(ま)た奚(なん)ぞ以て馬を牧する者に異ならんや。
├04 知士は思慮の変なければ則ち楽しまず。
├05 恵子と荘子(7) - 儒・墨・揚(揚朱)・秉(公孫竜?)四、夫子(ふうし)と五と為る 果たしてじ孰(いず)れか是なるや。
├06 恵子と荘子(8) - 恵子の墓を過(よぎ)る  夫子の死してより、吾れ以て質と為すなし 吾れ与(とも)にこれを言うなし。
├07 管仲、病に倒れ、桓公、後事を尋ねる
├08 呉王、狙(そ・猿)を射る - 汝の色を以て人に驕(おご)ることなかれ。
├09 南伯子綦(なんぱくしき)と顔成子(がんせいし・顔成子游)(2) - 人を悲しむをこれ悲しむ者を悲しむ。
├10 孔子、楚に之(ゆ)き、楚王・孫叔敖(そんしゅくごう)・市南宜僚(しなんぎりょう)、是をもてなす - 不言の言 不道の道
├11 子綦に八子あり - 吾れの吾が子と遊ぶ所の者は、天地に遊ぶなり。
├12 齧欠(げいけつ)と許由(きょゆう) - 愛利は仁義より出ず 仁義を捐(す・棄)つる者は寡(すくな)く、仁義を利とする者は衆(おお)し。
└13 援姝(えんしゅ)なる者、濡需(じゅじゅ)なる者、巻婁(けんる)なる者 - 大いなる不惑

  ・徐無鬼(じょ・むき) - 姓は徐、名は無鬼 魏の隠士だという
  ・魏の武侯 - 魏の2代君主 姓は姫、氏は魏、諱は撃 父、文侯に劣らぬ名君であったという。
  ・呉王 - 不詳
  ・楚王 - 孫叔敖なら23代荘王(侶)、市南宜僚ならば30代恵王(章)か。荘王と孫叔敖は孔子出生前の人物で、いずれにしても時代が合わない。

25 則陽篇(そくよう)
├01 則陽(そくよう)、楚を旅する
├02 生まれながらにして美なる者は、人これに鑑を与うるも、告げざれば則ち其の人より美なるを知らざるなり。
├03 魏罃(ぎおう・魏の恵王)、田侯牟(でんこうぼう)に刺客を向けんとす - 触氏と蛮氏、蝸牛角上の争い。蝸角之争
├04 孔子と子路(しろ)、市南宜僚(しなんぎりょう)を見る
├05 長梧(ちょうご)の封人(ほうじん・さきもり)と子牢(しろう) - 政を為すに鹵莽(ろもう)する勿(なか)れ、民を治むるに滅裂する勿れ。
├06 柏矩(はくく)、老子に学ぶ - 天下は猶お是(ここ)のごときなり。  天下に大菑(たいさい)あり、子は独(そ)れ先ずこれに離(かか)る。
├07 蘧伯玉(きょはくぎょく)、行年六十にして六十たび化す。 →蘧伯玉、行年五十にして四十九年の非を知り、六十にして六十化す(『淮南子』)
├08 孔子と大弢(たいとう)・伯常騫(はくじょうけん)・豨韋(きい・正字は獣偏に希)、衛の霊公を語る
└09 少知と大公調(だいこうちょう) - 丘里の言  天地なる者は形の大なる者なり 陰陽なる者は気の大なる者なり 道なる者はこれが公たり。

  ・則陽(そくよう) - 字は彭陽(ほうよう) また、彭が姓で、名は則陽だともいう。不詳。
  ・田侯牟(でんこう・ぼう) - 斉の威王? 田斉の3代君主 姓は嬀(ぎ)、氏は田、諱は因斉 田忌、孫臏らの主君。徐州で魏の恵王と盟約した。
  ・子路(しろ) - 姓は仲、名は由 魯の人 孔門十哲の一人で、武勇を好み、いささか軽率であるが実直。衛で蒯聵・孔悝の乱に巻き込まれ死す。
  ・子牢(しろう) - 『論語』子罕に見える孔子門下の琴牢、字は子開か?また琴牢は子張ともあり、子琴張(大宗師06-06)のことであるとも。
  ・柏矩(はくく) - 老子の弟子という。不詳。
  ・大弢(たいとう) - 不詳
  ・伯常騫(はくじょうけん) - 斉の天文官 『晏子春秋』に、景公が伯常騫を召して、邪気を祓(はら)わせたとある。晏嬰(晏子)と同時代の人。
  ・豨韋(きい)、 - 豨の正字は獣偏 不詳
  ・少知(しょうち) - 知識の少ない者の意
  ・大公調(だいこうちょう) - 大いなる公平な調和の意

26 外物篇(がいぶつ) - 荘子(4)雑篇(岩波文庫)はこの篇から
├01 外物(がいぶつ)は必すべからず。
├02 荘子、粟(ぞく)を監河侯(かんかこう)に貸(か・借)る - 我れを枯魚の肆(し・みせ)に索(もと)めん。轍鮒之急
├03 任(にん)の公子、大魚を釣る - 小説を飾りて以て県令に干(もと)むるは、其の大達に於いて、亦(ま)た遠し。
├04 儒は詩礼を以て冢(はか)を発(あば)く。
├05 老莱子(ろうらいし)と孔子 - 恵みて以て歓びて驁(ごう・傲)を為すは、終身の醜(はじ)なり。
├06 神亀、宋の元君に夢を見せる - 知も困(きわ)まる所あり、神も及ばざる所あるなり。
├07 恵子と荘子(9) - 無用を知りて、始めて与(とも)に用を言うべし。  無用の用
├08 荘子と逍遥遊 - 人能(よ)く遊ぶあらば、且(は)た遊ばざるを得んや。
├09 心に天遊なければ、則ち六鑿(りくさく)相い攘(みだ)る。
├10 徳は名に溢(あふ)れ、名は暴に溢る。
├11 佚(いっ)する者の未だ嘗(かつ)て過(よぎ)りて問わざる所なり。
├12 天下を譲られ、各々処する(1)
└13 魚を得て筌(せん・ふせご)を忘る。兎を得て蹄(てい・わな)を忘る。意を得て言を忘る。 →得魚忘筌

  ・監河侯(かんかこう) - 黄河の監督をする諸侯の意 『説苑(善説)』には魏の文侯(田子方篇21-01)とある。
  ・任(にん)の公子 - 任はいまの山東省にあった国 この公子が誰かは不詳。
  ・老莱子(ろうらいし) - 楚の隠者 二十四孝の一人で、70歳になってもなお幼児のまねをし、親を楽しませたという。一説には老子と同人物とも。

27 寓言篇(ぐうげん)
├01 寓言(ぐうげん)・重言(じゅうげん)・巵言(しげん) - 巵言は日日に出だし、和するに天倪(てんげい)を以てす。
├02 恵子と荘子(10) - 孔子を語る  其れ才を大本に受け、霊を復(おさ)めて以て生く。
├03 曾子(そうし)悲しめり
├04 東郭子綦(とうかくしき)と顔成子游(がんせいしゆう)(3) - 天に歴数(れきすう)あり、地に人拠(いげき)あり。
├05 衆罔両(しゅうもうりょう・うすかげ)と景(かげ) - 斉物論篇02-12
└06 陽子居(ようしきょ)と老子(2) - 大白は辱(じょ)の若(ごと)く、盛徳は足らざるが若し。

  ・曾子(そうし) - 姓は曾、名は参(しん)、字は子與(しよ) 孔子の弟子で、特に孝行の道に秀でていた。曾子と区別し、荘子は「そうじ」と濁る。
  ・東郭子綦(とうかく・しき) - 城郭の東に住まいしていた先生。 南伯子綦または東郭子と同人物?

28 譲王篇(じょうおう)
├01 天下を譲られ、各々処する(2) - 天下は至重なり。 天下は大器なり。
├02 大王亶父(たんぽ)の国 - 養う所用(ゆえん・所以)を以て養う所を害(そこな)わず。
├03 越の王子捜(そう)、丹穴(たんけつ)に逃(のが)る - 国を以て生を傷(そこな)わず。
├04 子華子(しかし)、昭僖侯(しょうきこう)に見(まみ)ゆ - 両臂(りょうひ)は天下より重きなり。
├05 魯君、顔闔(がんこう)を知る - 道の真は以て身を治め、其の緒余は以て国家を為(おさ)め、其の土苴(どしょ)は以て天下を治む。
├06 列子困窮し、鄭(てい)の子陽、粟(ぞく)を遣わす
├07 楚の昭王、国を失い、屠羊説(とようえつ)走りて従う
├08 原憲(げんけん)と子貢(しこう) - 憲は貧なり、病(つか)るるに非ざるなり。 →山木篇20-06
├09 曾子(そうし)、衛に暮らす - 天子も臣とするを得ず、諸侯も友とするを得ず。
├10 孔子と顔回(8) - 足るを知る者は、利を以て自ら累(わずら)わさず、自得を審(つまび)らかにする者は、これを失うも懼(おそ)れず。
├11 中山の公子牟(こうしぼう・魏牟)と瞻子(せんし) - 生を重んずれば則ち利は軽(かろ)し。
├12 孔子、陳と蔡の間に囲まれ、七日火食せず(3) - 窮(きゅう)するも亦(ま)た楽しみ、通ずるも亦た楽しむ 楽しむ所は窮通に非ざるなり。
├13 天下を譲られ、各々処する(3) - 其の義に非ざる者には、其の禄を受けず 無道の世には、其の土を践(ふ・踏)まず。
└14 伯夷(はくい)と叔斉(しゅくせい) - 治世に遭えば其の任を避けず、乱世に遇えば苟(いや)しくも存することを為さず。 周の粟(ぞく)を食わず。

  ・大王亶父(たんぽ) - 古公亶父 姓は姫 太伯・虞仲・季歴の父で、周の文王の祖父。 太公望(呂尚)の太公とは亶父(または季歴とも)を指す。
  ・越の王子捜(そう) - 越王無顓(むせん)の事といわれる
  ・子華子(しかし) - 全生(生命を全うする)を説いた思想家。則陽篇(25-03)の華子と同人物? 頭にも子を付けるのは敬意の表れ(子列子など)。
  ・昭僖侯(しょうきこう) - 韓の昭侯 申不害(しんふがい)を宰相に、法と賞罰で弱小国である韓をよく治める。 「君たるものよく為さじ、よく知らず」
  ・鄭の子陽 - 鄭の繻公に仕えた宰相 厳酷な人で、最期は国人に殺された。
  ・楚の昭王 - 楚の29代君主 姓は羋(び)、氏は熊、諱は珍 屍を伍子胥に鞭打たれた平王(熊居)の子。呉王闔閭の軍に大敗し、逃亡する。
  ・屠羊説(とよう・えつ) - 屠羊を稼業としている説氏 呉軍に首都郢を奪われると、昭王に従って国を逃れた。忠義者として賞されるも辞退する。
  ・原憲(げんけん) - 字は子思 孔子の弟子 その知行地の宰となるも、俸禄が多すぎると辞退するなど清廉な人物であった。(『論語』雍也)
  ・瞻子(せんし) - 名は何 道家的な立場の思想家。江海に隠棲していたという賢人。
  ・伯夷(はくい) - 孤竹国の公子 父の遺言に従い、弟・叔斉に家督を譲って出奔。追ってきた叔斉と周の武王を諫め、後、首陽山に逃れ餓死する。
  ・叔斉(しゅくせい) - 自らも君位を棄て出国し、兄・伯夷と行動を共にする。『史記』列伝の第一に挙げられるなど、兄弟で廉士として称えられる。

29 盗跖篇(とうせき)
├01 孔子と盗跖 - 盗は子より大なるは莫(な)し。 虎頭を料(な・撩)で、虎須(鬚)を編(もてあそ・撫)ぶは、幾(ほと)んど虎口を免れざるかな。
├02 子張(しちょう)、満苟得(まんこうとく)に問う - 恥なき者は富み、言多き者は顕(あら)わる。 小盗は拘(とら)われ、大盗は諸侯となる。
└03 無足(むそく)と知和(ちわ) - 廉貧の実は、以て外より迫らるるに非ざるなり。

  ・盗跖(とうせき) - 伝説の大盗賊 黄帝の時代の人物とも 多くの手下を抱え天下を荒らしまわったという。 柳下季の弟とするのは一種の風刺。
  ・柳下季(りゅうか・き) - 柳下惠 姓は展、名は獲、字は季禽(子禽) 魯の大夫で、孟子に「百世の師」と激賞される賢人。盗跖とは無縁の士。
  ・子張(しちょう) - 姓は顓孫(せんそん)、名は師 陳の人 孔子の弟子で、「過ぎたるは猶お及ばざるがごとし」の「過」と評された。(『論語』先進)
  ・満苟得(まんこうとく) - 少しでも獲得して満足する者の意 欲望にまかせて利に走る立場。
  ・無足(むそく) - 「足る無し」で、満足を知らない者の意。
  ・知和(ちわ) - 「和を知る」で、調和を知る者の意。

30 説剣篇(せっけん)
└01 剣士荘周(荘子)、趙(ちょう)の文王に剣事を語る - 臣に三剣あり 曰わく、天子の剣、諸侯の剣、庶人の剣

  ・趙の文王 - 恵文王 趙の7代君主 姓は嬴、氏は趙、諱は何 平原君の兄。藺相如・廉頗・趙奢らを用い、国を安定させた。「完璧」の所有者。

31 漁父篇(ぎょほ)
└01 孔子と漁父(ぎょほ) - 惜しいかな、子の早(つと)に人偽(じんぎ)に湛(しず・沈)みて、晩(おそ)く大道を聞くや。

  ・漁父(ぎょほ) - 漁師の老人 孔子に道を諭すも、「与(とも)に往く者」ではないとして何処かへ去っていく。

32 列禦寇篇(れつぎょこう)
├01 列子と伯昏瞀人(はくこんむじん)(2) - 巧者は労して知者は憂うるも、無能者は求むる所なく食らいて遨遊(ごうゆう)す。 不繫(ふけい)の舟
├02 鄭(てい)の兄弟、緩(かん)は儒と為り、翟(てき)は墨と為る - 自ら是とするは有徳者は以(すで)に知らず、而るを況(いわ)んや有道者をや。
├03 荘子曰わく - 道を知るは易く、言う勿(な)きは難し。
├04 朱泙漫(しゅひょうまん)、竜を屠(ほふ)る技を支離益(しりえき)に学ぶ
├05 聖人は必を以て必とせず、故に兵なし。
├06 小夫の知は、苞苴(ほうしょ・贈り物)・竿牘(かんとく・手紙)を離れず。
├07 宋の曹商(そうしょう)、秦王に百台の車を賜る - 治むる所愈(いよいよ)下りて、車を得ること愈多し。 →曹商舐痔
├08 魯の哀公と顔闔(がんこう)、孔子を語る - 性に忍びて以て民に視(しめ)し、而(しか)も信ならざるを知らず。
├09 人に施して忘れざるは、天布に非ざるなり。
├10 外刑と内刑
├11 孔子曰わく - 凡(およ)そ人の心は、山川よりも険しく、天よりも知り難し。
├12 正考父(せいこうほ)と而夫(じふ・凡夫)
├13 凶徳に五あり、中徳を首と為す。
├14 窮に八極あり、達に三必あり、形(刑)に六府あり。
├15 宋王と驪竜(りりゅう) - 今、宋国の深きは、直(た)だに九重の淵に非ざるなり。宋王の猛は、直だに驪竜のみに非ざるなり。
├16 荘子と犠牛 - 衣するに文繡を以てし、食うに芻叔を以てするも、其の牽きて太廟に入るに及びては、孤犢たらんと欲すと雖も其れ得べけんや。
├17 荘子、将に死せんとす - 吾れ天地を以て棺槨(かんかく)と為し、日月を以て連璧と為し、星辰を珠璣(しゅき)と為し万物を齎送(しそう)と為す
└18 不平を以て平にすれば、其の平や不平なり。

  ・緩(かん) - 儒を学び、三年で独立して周囲を感化するも、父に認められず自殺。弟が学を成したのは自分のお陰であるとする自惚れ屋。
  ・翟(てき) - 緩の弟 墨を学んで、兄と論争する。父は翟の味方をしたので、やがて緩は自殺してしまった。当然ながら墨翟(墨子)とは別人。
  ・朱泙漫(しゅひょうまん) - 千金を支払い、支離益に竜殺しの技法を学ぶも、(竜などいないので)生涯用いることがなかった。
  ・支離益(しり・えき) - 千金で朱泙漫に竜殺しの技法を授ける。 竜殺しの技法は、でたらめで用い所のない方術(学説)の象徴か。
  ・曹商(そうしょう) - 宋王の命で使者として秦に赴き、王に気に入られて車百台を賜った。宋に帰国後、それを荘子に自慢するが… →曹商舐痔
  ・正考父(せいこうほ) - 宋の湣公の子孫で、孔子の10代前の先祖だという。 また、孔家は、宋の開祖微子啓を祖にしているが、定かではない。

33 天下篇(てんか) - 先秦の主な思想家を総評する篇
├01 百家争鳴 - 天下の方術を治むる者は多し 皆其の有を以て加うべからずと為す。 哀しいかな、百家往きて反(かえ)らず、必ず合せず。
├02 墨翟(ぼくてき・墨子)と禽滑釐(きんかつり) - 氾(ひろ)く愛し、兼ね利して、闘を非とす。
├03 宋銒(そうけい)と尹文(いんぶん) - 禁攻寝兵を以て外と為し、情欲寡浅を以て内と為す。
├04 彭蒙(ほうもう)・田駢(でんべん)・慎到(しんとう) - 知を棄て己れを去りて、已むを得ざるに縁り、物に泠汰(れいた)して、以て道理と為す。
├05 関尹(かんいん・尹喜)と老聃(ろうたん・老子) - 建つるに常無有、主とするに太一、儒弱謙下を表と為し、空虚にして物を毀たざるを実と為す。
├06 荘周(そうしゅう・荘子) - 巵言(しげん)を以て曼衍(まんえん)を為し、重言(じゅうげん)を以て真を為し、寓言(ぐうげん)を以て広を為す。
└07 恵施(けいし・恵子) - 人に反するを以て実と為し、而して人に勝つを以て名を為さんと欲す。徳に弱くして物に強く其の塗(道)は隩(かたよ)る

  ・墨翟(ぼくてき) - 墨子 墨家の始祖 出自は不詳 兼愛・非攻・節用・非楽などの思想で知られる。一時は儒家と二分するほどの勢力を誇った。
  ・禽滑釐(きん・かつり) - 魏の人 墨子の跡を継ぎ鉅子(きょし・指導者)となる。墨家の狂信的団結は彼の功績という。元は子夏の弟子とも。
  ・宋銒(そうけい) - 墨家(名家) 宋栄子 宋牼(そうこう) 宋の人 稷下の学士。墨子学派の非戦論者で、尹文とともに宋尹学派と称される。
  ・尹文(いんぶん) - 名家 尹文子 斉の人 稷下の学士の一人であり、和合と非戦を説き、宋銒とともに宋尹学派と称される。
  ・彭蒙(ほうもう) - 道家 斉の宣王の時に稷下の学士となり、宋銒、尹文、公孫龍らとともに学んだという。 田駢・慎到は、彭蒙に師事した。
  ・田駢(でんべん) - 道家(法家) 斉の人 稷下の学士。弁舌に巧みで「天口駢」と呼ばれた。斉宣王に「訾養千鍾、徒百人」と厚遇される。
  ・慎到(しんとう) - 道家(法家) 趙の人 斉の稷下の学士。彼の説く「勢」の思想は、商鞅の「法」、申不害の「術」とともに韓非子へ継承された。
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■荘子(そうじ) 33篇
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■内篇
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01 逍遥遊篇(しょうようゆう)
02 斉物論篇(せいぶつろん)
03 養生主篇(ようせいしゅ)
04 人間世篇(じんかんせい)
05 徳充符篇(とくじゅうふ)
06 大宗師篇(だいそうし)
07 応帝王篇(おうていおう)

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■外篇
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08 駢拇篇(べんぼ)
09 馬蹄篇(ばてい)
10 胠篋篇(きょきょう)
11 在宥篇(ざいゆう)
12 天地篇(てんち)
13 天道篇(てんどう)
14 天運篇(てんうん)
15 刻意篇(こくい)
16 繕性篇(ぜんせい)
17 秋水篇(しゅうすい)
18 至楽篇(しらく)
19 達生篇(たっせい)
20 山木篇(さんぼく)
21 田子方篇(でんしほう)
22 知北遊篇(ちほくゆう)

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■雑篇
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23 庚桑楚篇(こうそうそ))
24 徐無鬼篇(じょむき)
25 則陽篇(そくよう)
26 外物篇(がいぶつ)
27 寓言篇(ぐうげん)
28 譲王篇(じょうおう)
29 盗跖篇(とうせき)
30 説剣篇(せっけん)
31 漁父篇(ぎょほ)
32 列禦寇篇(れつぎょこう)
33 天下篇(てんか)

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 ■参考書籍
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  孟子曰く「古人の糟粕? 私なら古人の著書を読み尚友とするけどねw」
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 『荘子 内篇・外篇・雑篇(1)~(4)』 荘周/金谷治/岩波文庫 …> [関連書籍] 
 『荘子』は道家思想の代表的古典として,儒家の『論語』や『孟子』などに対立しつつも古代中国思想の
 重要な一翼をなし、我が国にも多大な影響を与えた。 卑小な人間世界から飛び立ち、人為を超越した
 自然の世界に融けこんで、自由な精神を得ようとする荘子の思想は、まことに魅力的である。
....
 『荘子物語』 諸橋轍次/講談社学術文庫 …> [関連書籍]
 孔孟の教えが五倫五常を重んじ秩序を固定化するのに対して、荘子の哲学は無為自然を基本とする。
 二千三百年後の今日なお、社会の各分野で『荘子』が益々注目される所以がそこにある。
 変幻龍のごとしと称されるその天下の奇文を、大儒諸橋博士が縦横に説いて余すところがない。
....
 『老子 -無知無欲のすすめ-』 老子/金谷治/講談社芸術文庫 …> [関連書籍] 
 『老子』の思想は、人間は自然世界の万物のなかの一つであるという自然思想の立場をつらぬく。
 したがって老子は、人間の知識と欲望が作りあげた文化や文明にたいして懐疑をいだき、鋭く批判する。
 無知無欲であれ、そして自然に帰って本来の自己を発見せよ、という。 第一人者が説く老子の精髄。
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 『老子』 老子/蜂屋邦夫/岩波文庫 …> [関連書籍] 
 熾烈な戦国時代を生き抜く処世の知恵であり一種の統治理論であるが、同時に、世の中と
 人間についての深い洞察力によって、人生の教科書ともいうべき普遍性を持っている。
 ここで説かれる平和的で、自足、素朴なあり方は、時代を超えて人々の心に訴えかける。
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 『列子(上・下)』 列禦寇/小林勝人/岩波文庫 …> [関連書籍] 
 『列子』八篇は道家思想を伝える代表的な古典であるが、「杞憂」「朝三暮四」「愚公移山」など
 よく知られた絶妙な寓言・寓話が多く、滋味ゆたかな説話文学の一大宝庫ともなっている。
 本書は原文と訓読文に細緻な校・注を付し、さらに分りやすい現代語訳を加えた良書である。
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 『諸子百家』 浅野裕一/講談社学術文庫 …> [関連書籍]
 春秋戦国を縦横無尽に駆け抜けた才智と戦略、自らの理想を実現すべく諸国を巡った諸子百家。
 快楽至上主義の楊朱と兼愛の戦士・墨子の思想がなぜ天下を二分するほど支持されたのか。
 新出土資料で判明した老子、孫子、孔子などの実像や、鄒衍・公孫龍らの思想も興味深く説く。
....
 『菜根譚』 洪自誠/中村璋八・石川力山/講談社学術文庫 …> [関連書籍] 
 本書は、「儒・仏・道」の三教を根幹とする『菜根譚』の真髄を体得して日常生活の指針とするため、
 儒・道教の専門家と仏教、特に禅学を専攻する学者の二人が、長年に亙り原典を全面的に見直し、
 これを究明し、新たに書き下ろした。 現世を生きぬく知恵と処世の極意が満載された必読の書。
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 『中国古典名言事典』 諸橋轍次/講談社学術文庫 …> [関連書籍]
 厖大な中国の古典のなかから4,800余を精選、簡潔にして分かりやすい解説を付した名言名句集。
 どの章句にも古典の英知・達人の知恵・人間のドラマが宿っており、人生の指針にみちている。
 激動の時代を生きる現代人が座右に置いて、あらゆる機会に再読・三読すべき画期的な辞典である。
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