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『孝経 全訳注』 曾子門弟/加地伸行/講談社学術文庫 …> [関連書籍] |
本文十八章と付篇一章から成る『孝経』は、孝道を論じた儒教の経書で、永く読み継がれてきた。
しかし、単に親への孝行を説く道徳の書ではなく、中国人の死生観・世界観が凝縮された書である。
『女孝経』『父母恩重経』など周辺資料も多数紹介・解読し、家族を重視する人間観を分析する。 |
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■曾子(そうし) - 生没年:前505 - 前435頃 姓:曾 名:参 字:子與 出身地:魯国武城 …
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孔子の直弟子で 46歳年少。曾蒧の子。儒家の黎明期における重要人物であり、特に孝行の道に秀で、
「二十四孝」のひとりに数えられる。彼に学んだ門人が『孝経』や『大学』などの経典諸篇を著したという。
生涯魯で教育にあたり、孔子の孫である子思らに善く真髄を伝えたことから、後世「宗聖」と称された。
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■『孝経』について …
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『孝経』は、儒教の経典である「十三経」の一に数えられる小篇。 著者は曾子の門人とされる。
孔子と曾子の問答を記述したもので、その名が示すように、「孝」こそが道徳の根本であると説き、
天子から庶人まで、諸階級に応じた孝道を論じ、父母・兄弟、そして先祖への仕え方を述べる。
『孝経』のテキストには「今文」18章と「古文」22章の二種があり、現行本は今文系を主流とする。
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■本頁について
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『孝経』(今文孝経) 18章のすべてについて、各章の概要・重要文句を抄出した。
各篇の章立て・書き下し・注釈は、『孝経 全訳注』(加地伸行/講談社学術文庫)による。
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※本頁は上記本の補助的な目次・ガイドを目指し作成しています。現代語訳や注釈等は訳本をご確認ください。
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■孝経(こうきょう) 1巻18章 1,903字
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01 開宗明義章 第一(かいそうめいぎ) - 宗を開き義を明らかにす
├01 仲尼(ちゅうじ・孔子)居(やす)く、曾子(そうし)侍(じ)す。
├─ 子曰(のたまわ)く、先王 至徳の要道(ようどう)有りて、以て天下を順(おさ)む。
├─ 民 用(もっ)て和睦し、上下(しょうか)怨み無し。汝これを知るか、と。
├02 曾子 席を避けて曰く、参(しん・曾参)や敏(と)からず、何ぞ以てこれを知るに足らん、と。
├─ 子曰く、夫れ孝は、徳の本なり。教えの由りて生ずる所なり。 復(かえ)り坐(お)れ。吾、汝に語(つ)げん、と。
├03 身体髪膚(しんたいはっぷ)、これを父母に受く。敢えて毀傷(きしょう)せざるは、孝の始めなり。 →身体髪膚
├─ 身を立て道を行い、名を後世に揚(あ)げ、もって父母を顕(あら)わすは、孝の終りなり。
└─ 夫れ孝は、親に事(つか)うるに始まり、君に事うるに中(なか)ごろし、身を立つるに終る。
02 天子章 第二(てんし) - 天子の孝道
├01 親を愛する者は、敢えて人を悪(にく) まず。 親を敬する者は、敢えて人を慢(あなど)らず。
└─ 愛敬 親に事(つか)うるに尽きて、而して徳教 百姓(ひゃくせい)に加わり、四海に刑(のっと)る。 蓋(けだ)し天子の孝なり。
03 諸侯章 第三(しょこう) - 諸侯の孝道
├01 上(かみ)に在りて驕(おご)らざれば、高くとも危うからず。節を制し度を謹めば、満つるとも溢(あふ)れず。
└─ 富貴 其の身を離れずして、然る後に、能く其の社稷(しゃしょく)を保ち、其の民人を和(ととの)わしむ。蓋(けだ)し諸侯の孝なり。
04 卿大夫章 第四(けいたいふ) - 卿大夫の孝道
├01 法に非ざれば言わず、道に非ざれば行わず。口に択言(たくげん)無く、身に択行(たくこう)無し。 →択言択行
└─ 言(こと) 天下に満ちて口過無く、行い 天下に満ちて怨悪無し。三者備わりて、然る後、能く其の宗廟を守る。蓋(けだ)し卿大夫の孝なり。
05 士章 第五(し) - 士の孝道
├01 孝を以て君に事(つか)うれば則ち忠。敬を以て長に事うれば則ち順。忠順失わずして、以て其の上(かみ)に事う。
└─ 然る後、能く其の禄位(ろくい)を保ち、その祭祀を守る。蓋(けだ)し士の孝なり。
06 庶人章 第六(しょじん) - 庶人の孝道
├01 天の道を用(もち)い、地の利を分(わか)ち、身を謹み用を節し、以て父母を養う。此れ庶人の孝なり。
└─ 故に天子より庶人に至るまで、孝 終始無くとも、及ばざるを患(うれ)うる者、未だこれ有らざるなり。
07 三才章 第七(さんさい) - 天・地・人の三才
├01 夫れ孝は天の経(けい)なり、地の義なり、民の行いなり。天地の経にして、民 是れこれに則(のっと)る。
├─ これに陳(の)ぶるに徳義を以てすれば、民 興(おこ)り行う。これに先んずるに敬譲を以てすれば、民 争わず。
└─ これを導くに礼楽を以てすれば、民 和睦す。 これに示すに好悪を以てすれば、民 禁を知る。
08 孝治章 第八(こうち) - 孝もて治むる
└01 生けるときには則ち親これに安んじ、祭るときには則ち鬼これを享(う)く。是を以て天下和平し、災害生ぜず、禍乱作(おこ)らず。
09 聖治章 第九(せいち) - 聖もて治むる
├01 天地の性、人もて貴しと為す。
├─ 人の行い、孝より大なるは莫し。孝は父を厳(たっと)ぶより大なるは莫し。父を厳ぶは天に配するより大なるは莫し。
├02 聖人厳ぶに因りて以て敬を教え、親しむに因りて以て愛を教う。聖人の教え、肅(おごそ)かならずして成り、その政 厳しからずして治まる。
├03 父母これを生む。続(つ)ぐこと、焉(これ)より大なるは莫し。
├─ 其の親を愛せずして他人を愛すること、これを悖徳(はいとく)と謂う。
├─ 其の親を敬せずして他人を敬すること、これを悖礼(はいれい)と謂う。
└04 君子、言(こと)は道(い)うべきを思い、行いは楽しむべきを思う。
10 紀孝行章 第十(きこうこう) - 孝行を紀す
├01 孝子の親に事(つか)うるや、居れば則ち其の敬を致し、養えば則ち其の楽しきを致し、
├─ 病には則ち其の憂いを致し、喪には則ち其の哀しみを致し、祭には則ち其の厳(おご)そかなるを致す。
└─ (中略)親に事(つか)うる者、上(かみ)に居りて驕(おご)らず、下(しも)と為りて乱れず、醜(しゅう・衆)に在りて争わず。
11 五刑章 第十一(ごけい) - 五つの刑罰
├01 五刑の属三千、而して罪 不孝より大なるは莫し。
└─ 君を要(おびや)かす者は上(かみ)を無(なみ)す。聖人を非(そし)る者は法を無す。孝を非る者は親を無す。此れ大乱の道なり。
12 広要道章 第十二(こうようどう) - 要道を広むる
├01 民に親愛を教うるは、孝より善きは莫し。民に礼順を教うるは、悌より善きは莫し。
└─ 一人を敬して千万人悦(よろこ)ぶ。敬する所の者は寡(すくな)く、而して悦ぶ者衆(おお)し。此れをこれ要道と謂うなり。
13 広至徳章 第十三(こうしとく) - 至徳を広むる
└01 教うるに孝を以てするは、天下の人父 為(た)る者を敬する所以なり。教うるに悌を以てするは、天下の人兄 為る者を敬する所以なり。
14 広揚名章 第十四(こうようめい) - 揚名を広むる
├01 君子の親に事(つか)うるや孝、故に忠 君に移すべし。兄に事えて悌、故に順 長に移すべし。家に居りて理(おさ)む、故に治 官に移すべし。
└─ 是(ここ)を以て行い内に成り、而して名 後世に立つ。
15 諫争章 第十五(かんそう・諫諍) - 諫め争う
├01 天子に争臣七人有れば、無道と雖も、天下を失わず。諸侯に争臣五人有れば、無道と雖も、国を失わず。
├─ 父 争子(そうし)有れば、則ち不義に陥らず。 (中略)不義に当たれば、則ち子は以て父に争わざるべからず。臣は以て君に争わざるべからず。
└─ 故に不義に当たれば、則ちこれに争う。父の令に従うのみなる、又、焉(いずくん)ぞ孝と為すを得んや。
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・諌臣国に在れば則ち其の国正しく、争子家に在れば則ち其の家直し、国家の安危は政道の直否に在り、仏法の邪正は経文の明鏡に依る。
(日蓮の北条時宗への御状より 文永五年十月十一日)
16 応感章 第十六(おうかん) - 応じ感ぜしむる
├01 身を脩め行いを慎むは、先〔祖〕を辱むるを恐るればなり。
└─ 孝悌の至れるは、神明に通じ、四海に光(み)ち、通ぜざる所無し。
17 事君章 第十七(じくん) - 君に事(つか)うる
└01 君子の上に事うるや、進んでは忠を尽くさんことを思い、退きては過ちを補わんことを思う。其の美を将順し、其の悪を匡救(きょうきゅう)す。
18 喪親章 第十八(そうしん) - 親を喪(うしな)う
├01 孝子の親を喪(うしな)うや、哭(こく)して偯(い)せず。礼は容(かたちつくろ)う無く、言は文(かざ)らず。
├─ 美しきを服(き)て安んぜず、楽(がく)を聞きて楽しまず、旨(うま)きを食して甘(うま)しとせず。此れ哀戚(あいせき)の情なり。
├─ (中略)喪、三年を過ぎざるは、民に終わり有るを示すなり。
├02 生けるに事(つか)うるに愛敬もてし、死せるには事うるに哀戚(あいせき)もてす。
└─ 生民(せいみん)の本(もと) 尽(ことごと)くし、死生の義備わる。孝子の親に事うるや終わる。
閨門章(けいもん) - 今文系には見られない章句。『古文孝経』では、広揚名章と諫諍章の間に置く。
├01 子曰く、閨門(けいもん)の内、礼を具(そな)えたるかな。父を厳(たっと)び兄を厳ぶ。
└─ 妻子臣妾は、猶お百姓(ひゃくせい)徒役(とえき)のごとし。(以上全文)
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■今文孝経(きんぶんこうきょう) 1巻18章 1,903字
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01 開宗明義章 第一(かいそうめいぎ)
02 天子章 第二(てんし)
03 諸侯章 第三(しょこう)
04 卿大夫章 第四(けいたいふ)
05 士章 第五(し)
06 庶人章 第六(しょじん)
07 三才章 第七(さんさい)
08 孝治章 第八(こうち)
09 聖治章 第九(せいち)
10 紀孝行章 第十(きこうこう)
11 五刑章 第十一(ごけい)
12 広要道章 第十二(こうようどう)
13 広至徳章 第十三(こうしとく)
14 広揚名章 第十四(こうようめい)
15 諫争章 第十五(かんそう・諫諍)
16 応感章 第十六(おうかん)
17 事君章 第十七(じくん)
18 喪親章 第十八(そうしん)
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■古文孝経(こぶんこうきょう) 1巻22章
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庶人章を庶人・孝平章に分け、聖治章を聖治・父母生績・孝優劣章に分け、広揚名章と諫諍章の間に閨門章を置く。
今文と古文は章の分け方以外、ほぼ同内容といえるが、閨門章のみ今文系には見られない章句である。
01 開宗明義章(かいそうめいぎ)
02 天子章(てんし)
03 諸侯章(しょこう)
04 卿大夫章(けいたいふ)
05 士章(し)
06 庶人章(しょじん)
07 孝平章(こうへい)*
08 三才章(さんさい)
09 孝治章(こうち)
10 聖治章(せいち)
11 父母生績章(ふぼせいせき)*
12 孝優劣章(こうゆうれつ)*
13 紀孝行章(きこうこう)
14 五刑章(ごけい)
15 広要道章(こうようどう)
16 広至徳章(こうしとく)
17 広揚名章(こうようめい)
18 閨門章(けいもん)*
19 諫諍章(かんそう)
20 応感章(おうかん)
21 事君章(じくん)
22 喪親章(そうしん)
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本文十八章と付篇一章から成る『孝経』は、孝道を論じた儒教の経書で、永く読み継がれてきた。
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古代中国の大古典「四書」のひとつで、孔子とその弟子たちの言行を集録したもの。
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長年にわたって親しまれてきた岩波文庫版『論語』がさらに読みやすくなった改訂新版。 |
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孔子とその門人の言行録から成る『論語』は私たちの生き方の原点を見つめた思索の宝庫であり、
人間性を磨く叡智が凝縮した永遠の古典である。読めば読むほど胸に深く沁み込む簡潔な言葉の数々。
儒教学の第一人者の意欲的で懇切丁寧な注釈と、今にも語り出すかのような臨場感ある現代語訳。 |
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『論語物語』 下村湖人/講談社学術文庫 …> [関連書籍] |
二千年以上も経た『論語』の章句を自由自在に使って、著者の思想を物語に構成したものが本書で、
精神を後世に伝えたい一念が結晶している。孔子と弟子たちが古い衣をぬぎすて、現代に躍り出す。
その光景がみずみずしい現代語で丹念に描かれている。教育乱脈の今日の日本にとって必読の書。 |
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『孔子伝』 白川静/中公文庫BIBLIO …> [関連書籍] |
春秋の乱世にあって、「仁」による理想の徳治を説き、挫折と漂泊のうちに生きた孔子と弟子たち。
中国の歴史上屈指の偉大な哲人の残した言行は、『論語』として現在も全世界に生き続ける。
白川静が、史実と後世の恣意的粉飾を峻別し、その思想に肉薄する、画期的孔子伝である。 |
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天下国家の政治もその根本は一身の修養にあることを説く『大学』。人間の本性とは何かを論じ、
「誠」の哲学を説く『中庸』。朱子によって『論語』『孟子』とともに四書の一つとされた儒教の経典。
本書では、朱子以前の古い読み方を探求して、両書の本来の意味を明らかにすることを主眼とした。 |
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『孟子(上・下)』 孟軻/小林勝人/岩波文庫 …> [関連書籍] |
戦国時代の中国、百家争鳴の世に現われて、孔子の教えを軸にしつつ、独自の思想を展開した
孟軻の言行録である。彼は、人が天から与えられた本性は善であるという信念に立って、
この天から万人に等しく与えられた本性を、全面的に開花させるための実践倫理を示した。 |
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『荀子(上下)』 荀況/金谷治/岩波文庫 …> [関連書籍] |
勧学篇に始まり堯問篇に終る荀子の全思想の記録。彼は性悪説を主張し、その説くところによれば、
人間は放任すれば乱れるからその悪である性を矯正し、世の混乱を防ぐために伝統的な教え、
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春秋戦国を縦横無尽に駆け抜けた才智と戦略、自らの理想を実現すべく諸国を巡った諸子百家。
快楽至上主義の楊朱と兼愛の戦士・墨子の思想がなぜ天下を二分するほど支持されたのか。
新出土資料で判明した老子、孫子、孔子などの実像や、鄒衍・公孫龍らの思想も興味深く説く。 |
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『中国古典名言事典』 諸橋轍次/講談社学術文庫 …> [関連書籍] |
厖大な中国の古典のなかから4,800余を精選、簡潔にして分かりやすい解説を付した名言名句集。
どの章句にも古典の英知・達人の知恵・人間のドラマが宿っており、人生の指針にみちている。
激動の時代を生きる現代人が座右に置いて、あらゆる機会に再読・三読すべき画期的な辞典である。 |
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