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原告 第4準備書面 |
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平成16年(ワ)第999号
原告 金時 貢
被告 株式会社 丸得システム・プランニング
第4準備書面
帝国地方裁判所民事係 御中
原告 金時 貢 (印)
第1 被告会社における労働時間について
原告は、本訴において客観説の見地により、タイムカードの打刻時間を基準にして未払い賃金の請求を行っているが、これは所属長の監督下にあった労働時間の最小範囲での請求であり、原告がタイムカード打刻の前後に行った労働を含んでいない。
原告の所属事業所においては、従業員の出社時に、通用口のインターホンで所属長の点呼・確認を受けその監督下に入り、通用口の施錠を義務付けられていた。
また原告は、その際に商品の荷受け・検品作業等の業務を行う場合も多かった。
タイムレコーダーは事業所2階の事務所に設置されており、原告がタイムカードの打刻を行ったのは、これら施錠・荷受け・検品等の業務を終えてからである。
原告は、退社の打刻後にも日常的に売り場を見直し、店舗の照明・展示機・業務用機器の消し忘れ等を確認し、通用口の施錠を行い退社していた。
これら業務には、1日あたり5分から30分ほどの時間を要し、本請求に含めて然るべきものであるが、原告は客観的証拠であるタイムカードの打刻時間に限っての請求に止めているのである。
第2 制服への着替えについて
被告は、制服への着替え時間が労働にはあたらないと主張しているが、本件では、以下の要件を満たしており、正当な労働時間として認められるものであると考える。
1 業務を行なう上で必要不可欠なものであること
2 会社の指揮命令下で強制または義務付けされていること
被告自身が制服(所属する人間が、着衣を定められている服装)への着替えであると認めていることや、社員手帳・服務心得に「勤務中は規定の制服を正しく着用し、常に清潔を保ちましょう」「名札は当社の従業員である事を表すものですから、勤務中は必ず(制服の)所定の場所に正しくつけましょう」という規定があることからも、着替えが会社の指揮命令下で義務付けされていたことは明らかである。
判例によれば、「労働者が、使用者の明示または黙示の指揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間は、労働時間である」とされ、それが制服への着替えや準備行為等であったとしても、労働時間にあたるというのが通説である(三菱重工業長崎造船所事件
最高裁 平成12年3月9日判決:労働判例778号等)。
そもそも原告は、第1で述べたとおり、出社時はタイムカードの打刻前に業務を始め、退社時には、着替えや打刻の後にも労働を行っていた。
第3 付加金について
ようやく被告は、原告の主張する時間外労働と賃金の未払いがあった事実を一部認め、その支払いに応じる意思があるとのことで、この点については評価できる。
しかし、被告の付加金に対する主張には納得のいかない部分が多い。
労働基準法第114条の規定は、使用者の法令遵守を促し、違法な時間外労働や賃金の未払い等に厳格に対処するための定めであり、労働者の請求に基づき、裁判所はこれを命じることができる。
原告は、被告が法律の違反を認めた以上、相応する付加金の支払いを命ずるべきであると考えるし、また被告の不正はそれに値するものであると言える。
1 被告は、独自の賃金計算基準表(甲10号証)を所属長に徹底させ、全従業員に対し、タイムカードの
打刻時間に関係なく、時間外労働に対する未払いや、30分単位の賃金計算による全額払い違反を
長期に渡り故意に行っていた。
2 被告は、閉店後もレジ精算・清掃等の業務に相当の時間を費やすことを知っていながら(被告準備
書面B)、開店前の30分間・閉店後の45分間について、全従業員に対し無給取り扱いの時間外労働を
強制していた(甲10号証)。
事実、正規の手続きによる申請があれば、その都度請求に応じていたと主張している残業代ですら、
この時間帯の支払いがなかった。
3 被告は、朝礼・終礼・全体朝礼・勉強会等が任意参加のものであり、全従業員との間に「無給取り扱い
の労使合意(=労働契約)」を締結していたと主張しているが、少なくとも原告は、その様な労働契約を
結んだ覚えがないし、被告より締結書面の提出もない。
労働基準法第13条(この法律違反の契約)には、「この法律で定める基準に達しない労働条件を
定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、
この法律で定める基準による」という定めがあり、労働者の賃金に係わる契約について、一方的な通達
(甲10号証)を論拠にしているとしても、それは無効である。
被告会社には、無給取り扱いの時間外労働について、特別の定めをおいた労使協定も存在しない。
契約締結の事実がない以上、原告が参加した時間は労働時間であり、支払いを免れない。
4 被告は、本訴提起前に残業の認められる範囲の賃金を支払う意思があったと主張しているが、
平成16年10月8日にあった電話回答では、「閉店後45分間の支払いは認めていない」「申請のないもの
は一切認めていない」と独自解釈の説明に徹していた。
そこで会社が支払いを認めたのは、超過勤務に対する二十数万円の支払いのみであって、
現在認めている未払い額とは大幅に相違しており、意思表示の一貫性に欠ける。
5 被告取締役を含む役職者ですら、労働基準法をはじめとした諸法令の周知及び遵守にまったく関心が
なく、従業員に対し法令及び社内規程に著しく違反した指示・命令を強制し、無給取り扱いの時間外
労働や所定労働日数を超える勤務を慣例化していた。
不正に対し指摘のあった場合であっても、従業員の無知に付け込み、法的根拠のない独自基準の
説明に終始し、その改善と法令遵守の実践を怠った。
6 被告は、本訴提起後も他従業員への未払いに関して事実調査を一切行わず、その支払いや告知を
していない。従業員の請求があるまで賃金の支払いを行わないという不正が許されてはならないし、
被告の言動は非常に利己的で因循姑息であり、極めて悪質なものである。
被告のこの様な態度は、法律違反を犯し、糾弾された後においてもなお、法令遵守とその実践を行うつもりがないものと受け止めざるを得ない。
被告がこれらを改めないのであれば、原告が斟酌し、協議する余地はなくなる。
労働基準法の立案に参画した末弘厳太郎元東大教授は、同法の根本精神を貫徹するための担保として「監督制度の厳格化」「違反行為への厳重な制裁」「労働組合・労働者による監視と申告」を挙げ、さらに加えて付加金制度について「一種の罰金であり、第114条は民事的な罰則である」とし(『労働基準法運営の実際』毎日新聞社)、
横行する使用者の不正とサービス残業撲滅の手法のひとつとして期待を表明していた。
近年の労働判例を見るに、同制度を適用して一定の罰金を科し、違反を行った企業を厳格に戒め、再発の防止を強く促す事例も多く、大変に心強い。
原告も、本訴が不法な時間外労働と賃金の未払いに喘ぐ労働者らの公益に資する一例となる様、厳正な裁判を強く要望するものである。
以上
添付書証 なし
同時提出書面 証拠説明書
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※う〜ん、何だろう、だんだん主張がせこくなってきてるな…
タイムカード打刻前後の労働なんて、最初から請求するつもりもなかったのに、「1日3分の着替え時間は棄却しろ!」と主張されれば、一応は反論するしかないからな。ハァ、ショボ過ぎ。
※ここでいう「制服」とは、特別な衣服ではなく、エプロン一枚のことを指しています。
被告は「無給取り扱いの労使合意」の論拠となる、労働契約の締結書面を提出してくれるでしょうか?
私はそんな契約した覚えがないのですが、忘れてしまっているだけかな?
まさか、虚偽の労働契約を持ち出して、「任意参加」なんて主張している訳じゃないですよね。
あれだけ執拗に主張していたのだから、きっと提出するはずです。 参ったな〜認めざるを得ないよw
(結局「具体的な契約書の提出はできない」とご回答いただきました。・・ハァ?)
それにしても、「社内規程・ルールの徹底」(甲10号証)は使える。 法令違反の見本市ですね。
被告代理人も「これに関して、反論すべきことはありません」と仰っていましたし、
誰が代理人でも、この書面を読んだら「勝てるわけねーだろ!」と思うことでしょう。
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